はじめまして、社会保険労務士の神永隼人と申します。

社会保険労務士(略して社労士と言います)とは、社会保険や労働関連の法律の専門家として人事や労務管理を行う人のことを指します。私からは、皆さんが事業を行っていくうえで必要な情報を社労士の視点から説明させていただきます。

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皆さんは目標や夢をもって起業されるかと思います。その目標や夢の実現に向けての第一歩が、共に目標や夢の実現を目指したり、手伝ってくれる仲間つまり従業員を雇用すること、ではないでしょうか。雇用と一言で言っても、その形態にはいくつか種類があります。ということで、今回は、雇用形態とそれぞれのメリット・デメリットについて説明させていただきます。

雇用形態

雇用形態とは、「企業と従業員が締結する雇用契約の種類」です。会社では、正社員、契約社員、アルバイトなど様々な雇用契約がありますが、このような雇用契約の種類を、雇用形態と言います。以下は、その区分になります。

雇用には、大きく分けると正規雇用と非正規雇用の2種類があります。さらに非正規雇用については、会社と労働者の間で契約を直接結ぶかどうかで直接雇用と間接雇用に区分されます。

正社員

雇用期間の定めがない雇用形態です。長期雇用を前提に雇用契約を結ぶことになります。社会保険や交通費、住宅手当といった福利厚生や賞与・退職金の支給などを検討する必要があります。

メリット

  • 会社だけでなく、安定雇用など従業員にもメリットが大きいため、優秀な人材を集めやすいです。
  • 社内教育や人材育成に一定の時間をかけることができるので、将来的な業績向上につなげられます。

デメリット

  • 社内教育や人材育成にコストがかかる。
  • 簡単に解雇することができない。

①フルタイム正社員

正社員の中でも、会社が就業規則等で定める所定労働時間の上限まで働く雇用形態です。所定労働時間の上限は、1日8時間、週40時間です。会社の中心として働き、会社の成長を担う存在です。

②短時間正社員

フルタイム正社員と比べると所定労働時間(日数)が短い雇用形態です。会社にとっては、子育てや介護によってフルタイムで働くのが難しい人、高齢者などフルタイムでの勤務を希望していない人の中から優秀な人材を獲得できること、定着率を向上させられること、採用や教育訓練のコスト削減、社員のモチベーションアップ、外部に対するイメージアップなどのメリットがあります。一方で、事前に明確な制度化をしておかないと、フルタイムの正社員、パートタイム労働者など他の雇用形態で働く人たちからの不満の声が上がってしまうというデメリットがあります。

契約社員・嘱託社員

雇用期間の定めがある雇用形態です。契約期間の上限は3年のケースがほとんどで、期間満了により労働契約は自動で終了します。しかし、高度な専門知識をもつ人や60歳以上の人の上限は5年間です。さらに、同じ事業主のもとで5年以上働いた場合は、双方の合意があれば期限のない契約社員への転向が可能です。

嘱託社員は、定年後に再雇用される雇用形態です。正社員と同等の契約内容だったり、労働時間が短い分、給与が安くなったりと、嘱託社員の扱いは会社により異なります。

メリット

  • 正社員と同じように仕事を任せられ、人件費は正社員より抑えられるケースがあります。
  • スキルのある人材を繁忙期など期間限定で採用できるため、人材調整がしやすいです。

デメリット

  • 契約更新拒否や無期労働契約の申し出に対して、人員配置を改める必要性があります。

※嘱託社員は、今のところ関係がないかもしれませんが、ひとつの雇用形態として説明させていただきます。

パートタイム労働者・アルバイト

同企業内の正社員と比べて所定労働時間が短く、雇用期間に定めがある雇用形態です。会社がパートタイム労働者を雇う際は「パートタイム労働法」に則り、労働条件や昇給・賞与の有無といった、所定文書の明示・交付を義務化しています。パートやアルバイトなど、呼び方が異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法上のパートタイム労働者となります。

また、業務態度・内容の公正な評価・判断を行い、正社員への転換といった適切な措置に取り組まなければいけません。

メリット

  • 繁忙期や閑散期など必要に応じた人員調整がしやすいです。
  • 正社員より時間単価が低いため、人件費の抑制にも効果的です。

デメリット

入退社の入れ替わりが多いため、求人や教育も頻繁に発生しがちです。

派遣労働者

雇用主と就業先が異なる雇用形態です。まず、労働者は派遣会社と雇用契約を結びます。そして、派遣元と労働者派遣契約を結んでいる派遣先で働きます。業務の指揮・命令を行うのは派遣先です。派遣労働者は派遣元の福利厚生を利用可能です。厚生労働省では、雇用主と就業先が異なることで起こり得る問題の発生を危惧し、「派遣労働者法」で派遣労働者のためにさまざまな規定を設けています。同法において、問題発生時は派遣元と派遣先が責任を分担するとしています。

メリット

  • 専門スキルを有する即戦力な人材を、手間と時間をかけずに集められます。
  • 各種保険や給与計算の対応が不要です。

デメリット

派遣期間が決められているため、都度育成が必要になります。

注意したい契約形態

「業務委託契約」や「自営型テレワーカー」も雇用形態の一つと思われがちですが、会社側と個人事業主等の間に雇用契約は交わしません。そのため雇用形態には含まれず、契約形態として捉えられます。

①業務委託契約

会社は業務委託契約を結ぶ事業主に、仕事を委託することになります。会社は委託した仕事の完成物に対し、報酬を支払います。ほかの雇用形態の労働者と異なり、業務の指揮・命令下にないため、労働基準法の保護対象ではありません。ただし、働き方の実態から「労働者」と見なされれば、労働基準法の保護対象となります。

自営型テレワーカー

会社は自営型テレワーカーに、仕事を委託し、仕事の完成物に対して報酬を支払います。自営型テレワーカーは、パソコンなどの機器を使い業務を行います。近年、個々のライフスタイルにあう柔軟な働き方として、自営型テレワーカーに関心・期待が集まっています。しかし、労働契約を交わさないことによる報酬未払いや仕事の一方的な打ち切りなど、会社対テレワーカーの問題が相ついで発生しているのが現状です。

※雇用契約と業務委託契約の違いについては、別の機会にて説明させていただきます。

まとめ

今回は、従業員を雇用する際の雇用形態について説明させていただきました。一般的には「正社員が一番いいのでは?」と思われるかもしれませんが、正社員にもメリット・デメリットがあり、契約社員やパートタイム労働者等にも雇う側、労働者側のメリット・デメリットがあります。それぞれの雇用形態を知り、現在の状況にどの雇用形態が合うのかを考えてみるといいかと思います。

投稿者紹介

神永隼人 Kaminaga Hayato
職業社会保険労務士
経歴1979年生まれ・千葉県松戸市出身・柏市在住
神奈川大学法学部卒業後、金融総合商社を目指す会社に入社し、
商品先物取引の営業を経験。
30歳の時に病気を患い、1年間仕事を休業。その際に行った
傷病手当の申請を通して、社会保険労務士の仕事について知り、
資格の取得を目指す。
平成25年に合格。平成29年に開業、現在に至る。
お仕事で
大切にしていること
レスポンスを早くし、小回りのきいた対応を心がける
趣味ランニング、筋トレ、読書
活動拠点柏市
好きな言葉温故知新
特技・強み話をしっかり聞くところ
血液型O型
星座獅子座
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